思い


 私が、この業界に入ったころは、まだ、文字もイラストも
手描きのころで、筆を片手に割付けをしながら、トタン看板と
格闘していました。

 そうしている内に、コンピュータなるものが、世に出回って
きて、そして、我々の業界にも、押寄せてきました。

 その頃の、コンピュータシステムは、たいへん高価なもので、
高級外車が一台買える位のお値段でした。
 私の知合いの同業者は、そのシステムを導入するか、娘が
要求するベンツを購入するか、迷ったと言ってました。

 DOSなるもので、遅く、画面が小さく、大量の文字を一回
スクロールすると、文字のラインに沿って一文字づつ、
消えていって、次の画面が現れるまで、一眠り出来そうな
感じがしました。

 今は、その数千倍も早く、洗練されたソフトと大容量の
ハード。今では、すっかり筆とは縁がなくなり、年に一回
持つか、どうかであります。

 これは、どの業界にも言えることではないでしょうか、
その分、職人芸がなくなり、こんなことを言うとたいへん
失礼ですが、入社して二三ヶ月ぐらいの女の子でも、簡単な
看板製作が出来るのではないでしょうか。

 時代でしょうかね。


自己実現

 先日、隣町の大きな書店に久しぶりにいきました。
最近は、こういう所には、ほとんど行かないのですが…

 そこで気が付いたことは、How toモノの書籍が多いのに
びっくりしました。

 コーナー一杯に所狭しと並べられたいわゆる自己啓発本と
言われるものです。

 人生をいかに巧く効率よく、ソツなく渡り歩くかと、
勝組のための指南書であります。

 「私は、こうして会社を大きくした」「こうして信頼を
勝ち得た」などなど、もちろん勝間和代さんの書籍もしっかり
とありました。

 そのオビには、「やればできる問題解決の手法」「性格や能力を
分析し弱点克服」などのロゴが踊っていました。肉食系のエネルギッ
シュなドーパミン全開の焼肉定食いや弱肉強食の世界(すみません。
オヤジですから)です。

 その棚に並べられている本の著者は、努力と才覚で自己実現を
した人たちであります。偉いな、凄いなと思うと同時に草食系を
二、三十年ほど前に先取りしていた私にはムリ、出来ないと思い
ました。

 そこに並べられている本をすべて読んでも果たしてその人の様に
なれるのかなと思いました。一時的に触発されて、気分が高揚しても
一過性に終わってしまう様に思います。

 人々は自己実現を追い求め涙ぐましく一生懸命努力しています。
自己実現の先に何がある在るのでしょう。

 たけしさんは、イタリア製のスポーツカーを手に入れる為に頑張った
そうです。しかしそれを手に入れた時、こんなモノの為に俺は頑張って
きたのかと喪失感をおぼえてそれに蹴りを入れたそうです。

 思うに自己実現とは、自己愛をかっこよく言換えた言葉だと思います。
それは、正しく青天井。終りがありません。

 誰かを犠牲にして成立っている世界です。

 

夢見る頃を過ても

 先週の土曜日(2010年11/27)に、我オヤジバンドの発表会が
ありました。バンド名は、ミーちゃんハーちゃんアーちゃんバンド
(MHA BAND)と言います。拓郎からビートルズまでどんな曲でも演奏
してしまうミーハーバンドであります。

 ほとんどがオールディーズです。今回はビートルズ特集でした。
ジョン・レノンが亡くなってから30年、生きていれば70歳です。
40歳で、熱狂的なファンから5発の銃弾をうけ亡くなりました。

 私はすでに、その歳をはるかに超えています。しかし、70歳の
ジョンは想像できません。いつまでも、あの頃のジョンのままです。
高校時代にバンドを組んでいた仲間とウン十年ぶりに活動を始め
ました。動かなかった手も最近やっと慣れてきました。

 やっぱりビートルズはいい、最高です。ジョン&ポールの才能に
脱帽します。iTunesで最近やっと購入できるようになりました。
スティーブ・ジョブスも私と同様、彼等に恋する年代でした。

 正しく、世界を変えたバンドです。